「沈黙」の光と影/CDA2次に向けて(6)

タテさん

2012年11月28日 23:28

「沈黙」・・・・・・。
受験生の中には不得意にされている方が結構いらっしゃるようです。
沈黙が怖い。クライエントが沈黙してしまったらどうしよう? 不安が不安を呼びます。

そして、恐れていた「沈黙」が、訪れます。
ああ、どうしよう!! 質問、質問! 何も浮かんでこない!
とりあえず状況確認から。
という訳で要約とも確認ともつかないお話から始め、閉ざされた質問をしてしまいます。ですが、既にクライエントの気持ちは離れ、新しい話は出てきません。それよりも質問の意味を訊かれたりします。万事休す。
と、こんな悪夢さえ浮かんできます。

では、少し「沈黙」について考えてみましょう。

まず、「沈黙」とは双方が無言の状態で5秒間以上いる状態とします。従って、5秒未満は決して「沈黙」ではありませんので安心してください。むしろ、”間”やクライエント観察の為に使いましょう。ここで慌てて無理な質問などしてしまってはカウンセリングがぶち壊しです。やはり、「待つことができる」というのがカウンセラーの必須条件ですね。

「沈黙」にもいろいろあります。ですが、大別すると以下の2種類に分けられるかと思います。
 イ)クライエントがつくる「沈黙」
 ロ)カウンセラー(CDA)がつくってしまう「沈黙」

イ)の「沈黙」は内省的です。まさに無意識の領域に向き合い、自己探索に入っているところです。この「内省的な沈黙」はクライエント自ら作り出したものであり、ゆっくり探索できる空気感を伴って「待ってあげる」ことが大切です。それが「自己探索の支援」につながります。

受験生にとってイ)の沈黙が”光”だとすれば、”影”の沈黙もあります。それがロ)のカウンセラー(CDA)がつくってしまう沈黙ですね。

ロ)の沈黙はクライエントの「抵抗」です。
原因としては次の様なことが考えられます。
・(CDAの)態度や受け答えが機械的で気持ちがこもっていない
・いちいち長々と発言を確認され、煩わしい
・次々に質問され、話したいことが話せない
・次の質問を考えているようで、話を聴いていない
・反応が過剰でわざとらしい(あるいは、殆ど反応が無く/単調で、話を聴いているのか分からない)
・何でも同感されてしまい、そんなに簡単に分かるものかと思ってしまう
等々

問題は影の沈黙ですね。「抵抗的沈黙」。多くの受験生が恐れるのはこの沈黙だと思います。この沈黙が訪れた時、どんな言い回しで打開したらいいのか? それが知りたい!知りたい!知りたい!

お気持ちは分かりますが、そんな「魔法の言葉」はありません。
上記のような原因によって生じた「抵抗的沈黙」を「言い回し」によって打開しようと考えること自体が、何だか危険な方向に向かっているように思えます。

ここは普段から、かかわり行動、言語表現、非言語表現の基礎を磨き、”言い回し”ではなく、”場の力”がクライエントのお話を進めるのだと再確認したいところです。

でも、でも、でも、もしも、本試験で『影の沈黙』が訪れたら・・・。

クライエント(役)に感謝しましょう。そして、気づいた自分にOKを出しましょう。だって、このまま進んでいたら確実に不合格だった訳ですから。そして、うまくやろうとせず、何とかぎりぎりの合格ラインに復帰する努力をしてみましょう。

そうですね。沈黙が続いている訳ですから、ここは「要約」という手があります。
1)もう一度状況や事柄を辿り、感情・気持ちで言葉を結ぶ。
2)そして、反応を待つ。(5秒くらい。長い沈黙が続いたので5秒くらいどうということはありません。むしろ”間”ができて良かった位の余裕を持ちましょう。)
3)お話が出てきたら、それを丁寧に短い言葉で伝え返していきます。もし、言葉が出てこなかったら?
4)ここで始めて「開かれた質問」の機会が訪れました。「今までお話頂いて、今、ここで、どんなお気持ちですか?」と、ユックリ問い掛けてみましょう。
5)そしてお気持ちが出てきたら、「そうですよねぇ」なんて同感せず、「今、そう思ってられるんですね」と共感します。そして、更にキーワードについて問いを続けていきます。決して話題を替えてはいけません。考えや意味、価値観が出て来るまでその気持ちと一緒にいましょう。

以上は一例ですが、ポイントは言い回しではなく、気持ちを込めて共感的受容的表現(言語・非言語共)ができるかです。状況に合わせて、その場で、自分の「直感」を信じて、展開を考えて下さい。

こうして考えてみると、「内省的沈黙」は自己探索に入っているOKサインですから決して恐れる必要はありませんよね。むしろ歓迎すべきです。「抵抗的沈黙」は基礎、基本をしっかりやっていれば起こり得ない。もし起きたら、それは合格に向けの軌道修正サインだから、感謝。沈黙を恐れてお話が聴けなくなることこそ問題。ということになるかと思います。

ロジャーズは『沈黙を聴く』と表現していますが、達人は沈黙をむしろ利用したんですね。われわれはそこまでは行き得ませんが、せめて『沈黙の光と影』だけは見分けられるようになりたいと思います。

ご参考:「CDA実践研究会」(レジュメ、勉強会、ロープレ研修、逐語添削等)

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